交響曲第7番イシカワパラフレーズ

(オーケストラ・アンサンブル金沢 第234回定期公演「プログラム・ノート」より)

石川県を中心とする北陸地方固有の文化と、長い歴史的変遷の上に普遍性をかち得てきた西欧の芸術音楽を、私自身の問題としてどのように新しい表現に結びつけられるか、ということが、今回の作曲の主要なテーマだったと言ってよいでしょう。その背景として、バッハもベートーヴェンもその時代の最先端の音楽だったと言い続けた岩城マエストロの前向きな姿勢も大きな励みでした。

曲は緩・急・緩・急の4つのセクションから成り、さいごに短いコーダが付いて終わります。曲は前半が4拍子が主で、それは日本的身体表現に対応し、後半は3拍子が中心で西欧的なものに対応しています。最初の緩と急の間にはヴァイオリン独奏が、2回めの緩の後にはチェロの短い独奏がブリッジの役を果たすべく挿入されています。地域の素材としては、能登地方の「芽刈り唄」や、金沢市富樫の「しんこう踊り」また、越前の「舟漕ぎ唄」などがパラフレーズされたかたちで登場します。

また、能登の地震の跡や、地域が育んできたさまざまな日常や伝統的環境も少なからず曲のイメージづくりと関連していると言ってよいでしょう。世紀が変わって現在、芸術音楽は大きな転換期にさしかかりつつある、と私は思っています。これまでに多くの私の作品を名演奏で聴かせてくださったオーケストラ・アンサンブル金沢と、井上道義氏の初コンビがどんな演奏になるのか、心から楽しみにしています。

2007年12月20日 一柳 慧

作曲家プロフィール

一柳 慧(いちやなぎ とし)(作曲家・ピアニスト)

オーケストラ・アンサンブル金沢2007-2008 コンポーザー・イン・レジデンス

10代で二度毎日音楽コンクール(現日本音楽コンクール)作曲部門第1位受賞。19歳で渡米、ニューヨークでジョン・ケージらと実験的音楽活動を展開し、1961年に帰国。 偶然性の導入や図形楽譜を用いた作品で、様々な分野に強い影響を与える。 これまでに尾高賞を4回、フランス文化勲章、毎日芸術賞、京都音楽大賞、サントリー音楽賞、紫綬褒章など受賞多数。

作品は文化庁委嘱のオペラ「モモ」(1995)や、新国立劇場委嘱オペラ「光」(2003)の他、6曲の交響曲、室内楽作品、特に「往還楽」「雪の岸、風の根」「邂逅」などの雅楽、声明を中心とした大型の伝統音楽など多岐にわたっており、音楽の空間性を追求した独自の作風による作品を発表し続けている。

作品は国内のオーケストラはもとより、フランス・ナショナル、イギリス・BBC、スイス・トーンハレ、ノルウェー・オスロフィルなどにより世界各国で演奏されている。

現在、財団法人神奈川芸術文化財団芸術監督。 また、正倉院や古代中国ペルシャの復元楽器を中心としたアンサンブル「千年の響き」の芸術監督。

楽曲について

I 緩
笛や尺八など和楽器の音色をイメージさせる管楽器のソロ

II 急
「しんこう踊り」をパラフレーズしたリズミカルなメロディ

III 緩
静謐な雰囲気の3部、多くの打楽器が使われている

VI 急
後半は3拍子を中心に西欧的な曲調に変化する

世界初演

2008年1月8日
会場:石川県立音楽堂
指揮:井上道義
管弦楽:オーケストラ・アンサンブル金沢
オーケストラ・アンサンブル金沢 第234回定期公演

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