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沈金秋の野文筥(ちんきんあきののもんはこ)

昭和46年 1971
幅15.3×奥行24.2×高15.5
個人蔵

 品の良い朱塗りの地に、蓼と露草を側面に配し、蓋の甲面には馬追い虫が3匹飛んでいる。秋の野に虫の音が聞こえてくるような、そんな季節感ただよう作品である。作者の磨きぬかれた沈金の技を巧みに使い分けることで、草花の生き生きとした様、虫の動きを的確に描写することに成功している。生命あるものに対する作者の情感が、ひしひしと伝わってくる佳品である。一本の線、一つの点を念入りに息をひそめて彫り上げる、寡黙な作者の姿をそこに見ることができる。
 輪島塗の加飾といえば沈金と言われるほど、昔から行われてきた技法だが、従来の技法は線彫の浅彫が主体であったため、とかく平面的で品位に乏しいと言われていた。作者は、新聞写真の印刷や、江戸時代の画家・伊藤若冲の点描にヒントを得て、点彫を創意工夫するとともに片切彫も導入することで、立体的で豊かな表現を可能にし、芸術性を高めた沈金彫の功労者である。
 (加賀・能登の工芸・石川県)


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