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ふぐの卵巣の糠漬け

なぜ毒は抜けるのか


ふぐの卵巣の糠漬け製造工程と毒量の変化

ふぐの卵巣の糠漬け製造工程と毒量の変化図
※1MU/g:1g中に体重20gのマウス1匹を死亡させる毒性を持つことを表す

水揚げされ、製造所に届いたふぐの卵巣には個体差はありますが、5,000〜10,000MU/gのテトロドトキシンが含まれています。それが1年間の塩漬け後には30〜50MU/gまで下がります。塩漬け期間に卵巣から水分が抜けていきますが、その時に大部分のテトロドトキシンが一緒に抜けていったと推測されます。
その後、卵巣は1年半から2年以上糠漬けにされ、毒性検査を経て出荷されます。石川県の基準では10MU/g以下なら安全と見なし、食用が許されます。
糠漬け期間中、テトロドトキシンは水分と一緒に抜け出ていくと考えられます。抜けていくだけであれば、塩漬けの塩水、糠漬けの糠の中に相当量のテトロドトキシンが残っていなければなりません。1987年に発表された毒性変化の調査では、総毒量は製造前と糠漬け1年後では約10分の1に減少しています。なんらかの減毒作用があったのではないかと考えられます。
もっとも期待されているのは微生物、乳酸菌です。乳酸菌による「発酵」によって、糠漬け中に残っているテトロドトキシンが分解され、毒量が減少するのではないかと考えられています。また、テトロドトキシンの非生物学的な構造変化によって毒量が減少する可能性もいわれています。

塩漬けおよび糠漬け中のマフグ卵巣の毒性変化
測定時期 試料数 毒性(MU*/g) 総毒量**(MU)
平均±S.D 最低 最高
塩漬け前 35 443±279 15 1050 1.20×106
塩漬け後        
1カ月目 12 281±69 194 404 1.40
2カ月目 34 379±94 163 759 1.40×105
7カ月目 33 90±15 65 116 3.14×105
糠漬け後          
1年目 32 28±5 17 38 1.16×105
2年目 12 14±2 11 18  

*マウスユニット
**卵巣、浸出液および糠の毒量の合計
※出典:小沢千重子「化学と生物」25.222(1987)

しかし、現在のところ、テトロドトキシンがどのように減少していくのかについて科学的な確証は得られていません。今後のさらなる研究が待たれます。
なぜ毒が抜けるのか、謎は残ったままです。だからこそ、ふぐの卵巣の糠漬けは製法を変えることができません。変えることによって、毒が残ってしまっては困るからです。長い年月、事故が起こらなかった伝統の製法を愚直なほどに守り続けることで、私たちは世界に類を見ない奇跡の食品の深い味わいを堪能することができるのです。