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奇跡の毒抜き・いしかわの発酵文化について

世界の発酵食品

人類は古来、知らず知らずに微生物の恩恵にあずかり、発酵食品として食生活と健康に活かしてきました。世界で広く利用されている発酵食品と、各国の特徴ある発酵食品をいくつかご紹介します。

■キムチ<朝鮮半島>
キムチ画像「キムチ」はもともと漬け物全般をさす言葉。白菜はもちろんキュウリ、大根などさまざまな野菜でつくられ、辛みともに爽やかな酸味と旨みが口中に広がります。野菜を塩漬けした後、唐辛子、ニンニク、梨などの果物、塩辛と一緒に瓶に漬け込み、発酵させます。旨みの秘密は一緒に漬け込む塩辛。アミエビやイカ、小魚など、家庭ごとに好みのものを使います。酸味は乳酸発酵によるもので、乳酸菌の整腸作用が期待できるほか、食物繊維、ビタミン類をたくさん摂取でき、唐辛子に含まれるカプサイシンには体内脂肪を分解する効果があるといわれています。

■ザーサイ<中国・台湾>
ザーサイ画像 中国の漬け物といえば思い浮かぶ「ザーサイ」は四川省が本場です。カラシナの一種で、茎が肥大化し塊状になる野菜で、カロティンとビタミンCを豊富に含んでいます。茎部分の皮をむき、7〜8%の食塩で塩漬け。日干しし、白酒(パイチュウ、中国焼酎)とウイキョウ・八角・山椒・唐辛子・茗荷などの香辛料とともに瓶に漬け込みます。瓶を逆さにして置き、空気が入らないようにして1週間ほど発酵させます。

■ニョクマム、ナムプラー(魚醤)<東南アジア>
ニョクマム、ナムプラー(魚醤)画像 日本でもベトナム料理やタイ料理を出すレストラン等が増え、ニョクマムやナンプラーといった調味料が知られるようになりました。これらは「生の魚に塩を加え、魚に含まれる酵素によって発酵・熟成させた食品・魚醤」。石川県でつくられる「いしり/いしる」も仲間であり、中国、韓国はもちろんベトナム、タイ、カンボジア、フィリピン、インドネシア等東南アジア一帯でつくられ、アジアの食文化のつながりを感じさせます。原料は地域に身近なものを使い、メコン川流域では川で獲れる小魚をそのまま用います。

■テンペ<インドネシア>
テンペ画像 びっしりとカビに覆われ、薄いカマンベールチーズのような外見の「テンペ」。クモノスカビによる発酵食品です。大豆に吸水させ、皮を除き、1時間ほど煮て冷まします。40°C以下になったら、種菌を蒔き、30°Cで3日間発酵させます。発酵によって、リノール酸、リノレン酸、オレイン酸などの不飽和脂肪酸を生成。血中コレステロールを下げる作用等があります。これらの脂肪酸は酸化すると胃腸障害を起こしますが、テンペには抗酸化性化合物が含まれているため、酸化することなく有効に作用。ビタミン類が多く、たんぱく質が分解されているため、消化吸収がよいのも特徴のひとつです。

■ナタ・デ・ココ<フィリピン>
ナタ・デ・ココ画像 日本ではデザートとしてポピュラーになった「ナタ・デ・ココ」も発酵食品です。もともとフィリピン・ルソン島でつくられていました。ココナッツ果汁に15%程度の砂糖と酢酸菌の一種であるナタ菌を加え、10〜14日間発酵すると、ゼリー状の膜ができあがります。ナタ菌が生成したセルロースで、独特の弾力があります。

■白酒<中国>
中国で「白酒」といえば、茅台酒(マオタイチュウ)に代表される無色透明の蒸留酒のこと。酒は液体状で発酵させるのが一般的ですが、「白酒」は固体発酵させる珍しい酒です。原料の高梁(コーリャン)や小麦を砕き、もみがらや落花生の殻と混ぜ、水をまいて蒸します。ここに曲(チュイ)と呼ばれる麹を混ぜ、大きな穴に広げて、密閉して発酵させます。期間は酒によって異なり、10日から1年ほど。この発酵物を蒸留したものが「白酒」で、たった一度の蒸留で55〜70度という高いアルコール度数の酒ができあがります。なお、曲は大麦、小麦に小豆や緑豆を混ぜて粗挽き、水を加えたものを型に入れて固め、原料にもともとついているカビ菌によって発酵させます。レンガ状になったものを乾燥して保存し、粉砕して使います。

■ザワークラウト<ドイツ>
ドイツの漬け物ともいうべき「ザワークラウト」。キャベツの芯を取り除き、2ミリ程度の千切り。瓶などに切ったキャベツと2%程度の食塩を入れ重石をし、15〜20°Cで発酵させます。香りづけにディルシードやキャラウェイシードを加えます。期間は3週間ほど。それ以上になると、乳酸発酵が進みすぎ、酸味が強くなって味が落ちます。ビタミンCが豊富で、野菜が穫れない冬場のビタミンC補給に有効な保存食でした。日本の漬け物と違うのは、そのまま食べることはほとんどなく、煮物に使ったり、一度湯通しして冷ましてからサラダにします。

■シュール・ストレミング<スウェーデン>
シュール・ストレミング画像 世界一臭い食べものとして有名な「シュール・ストレミング」。ニシンを発酵させた缶詰ですが、爆発の危険性を避けるため、近年は飛行機機内への持ち込みを禁止する航空会社が多いようです。本来、缶詰は加熱殺菌して微生物の活動を停止させます。しかし、「シュール・ストレミング」は加熱殺菌せず、缶詰の中でも発酵が進み、炭酸ガスを放出するため、缶詰が変形するほど膨らみます。また、酸素量が限られているため、乳酸菌が異常代謝し、強い匂いを発生します。ニシンはべとべとに溶けていますが、酸味と塩味と旨みが入り交じった深い味。食べはじめは炭酸ガスが舌先をかすかに刺激するといいます。脂肪分はほとんど分解され、たんぱく質が豊富、ビタミン類、ミネラル類も多く含まれています。

■チーズ
動物の乳を発酵させ、加熱などの加工を加えていないナチュラルチーズは世界中で400種以上あるといわれています。基本的な製法は原料乳に種菌を混ぜ、カードというどろどろの状態になったら、ホエイと呼ばれる液体を取り除き、さらに脱水。食塩を加えて、成形し熟成させます。原料乳や使用する微生物もさまざまで、各地の個性豊かな「チーズ」が誕生します。味、匂い、色、食感には違いがありますが、おもにはたんぱく質と脂肪が20〜30%含まれ、原料乳の状態よりも栄養分の消化吸収がよく、ビタミンA・ビタミンB2、カルシウムなどのミネラル類の補給にも適しています。

■ヨーグルト
ヨーグルト画像 動物の乳に乳酸菌を混ぜ、成育しやすい温度で発酵させてつくる「ヨーグルト」。世界各地で、身近な動物の乳とその土地に固有の乳酸菌が一体となって、地域ごとにヨーグルトや類似した発酵乳が誕生、食べ方もいろいろな工夫がされています。注目されているのはヨーグルトに含まれる乳酸菌の力。腸内の有害細菌の生育を抑え、ウイルス感染を防ぎ、体の免疫力を高めるといわれています。また、ヨーグルトにはたんぱく質やビタミンB2、カルシウムが多く含まれていますが、なかでもカルシウムは乳酸と結合することで吸収率がよくなっています。

■ワイン
ワイン画像 ブドウの果皮についている天然酵母を使って発酵させることから生まれた「ワイン」は製法がとてもシンプルな酒です。紀元前3000年代には中近東でつくられており、エジプト、ギリシアに伝播。ローマ帝国に受け継がれ、帝国の拡大とともに世界各地に広がっていったといわれます。赤ワインは皮や実が混ざったままの果汁を発酵、白ワインは果汁をしぼって発酵させます。変わったワインといえば、「貴腐ワイン」ボトリテス・シネレア菌という細菌はブドウなどの果皮につくと、果皮のワックス質を溶かします。そこから水分が蒸発し、果汁の糖分が凝縮、ワインの有効成分グリセリンも生成されます。これを貴腐現象といい、このブドウでつくられるのが貴腐ワインです。コクがあり、とろりとした甘味が特徴です。