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奇跡の毒抜き・いしかわの発酵文化について

日本の発酵食品

全国どこでも口にすることができる日本の代表的な発酵食品と、ある地域の特産となっている個性的な発酵食品を紹介します。

■醤油
醤油画像 ソイソース(soy sauce)と呼ばれ、今や世界100カ国で使われているといわれる「醤油」。蒸した大豆と炒った小麦に種麹を混ぜ、醤油麹をつくります。そこに食塩と水を混ぜてもろみをつくり、発酵・熟成させます。このとき、働くのは耐塩性酵母と乳酸菌。醤油はカビ(麹)、酵母、乳酸菌という発酵に関わる三大微生物の連係プレーによってできあがるのです。醤油もろみは約18%と塩分濃度が高いため、耐塩性発酵微生物以外は成育できず、長期保存が可能です。

■味噌
すりつぶした蒸煮大豆に麹と食塩を混ぜ固体発酵させてつくる「味噌」は日本各地でさまざまな種類があります。大きく分けると、米麹を使う米味噌、麦麹を使う麦味噌、大豆麹を使う豆味噌に分類でき、さらに味や色などで区分されます。おもには愛知・岐阜・三重などの中部地域は豆味噌圏、九州・四国西部・山口県瀬戸内海側が麦味噌圏、そのほかは米味噌圏となっています。麦味噌で約10%、豆味噌で約18%のたんぱく質を含む高たんぱく食品であり、あまり肉食をしなかった日本人にとっては貴重なたんぱく源でした。リジン、ロイシン等の必須アミノ酸のほか、ビタミン類やミネラル類を豊富に含有。発酵によってできたレシチンには高血圧予防効果があり、リノール酸は毛細血管を丈夫にするといわれています。

■日本酒
日本酒画像 「日本酒」は世界の醸造酒の中でもアルコール度数が高い酒。原酒では20%に近いものもあり、ビール4〜6%、ワイン12〜15%と比べても、その特異さがわかります。これには日本酒独自のカビ(麹)と酵母を使う発酵が大きく関わっています。蒸し米、麹、酵母、水を混ぜ合わせたもろみの状態でアルコール発酵が進みますが、酵母は自分で生成したアルコールが増えるにつれ、力が衰えます。しかし、もろみに含まれる麹が米のでんぷんを糖化することによって酵母が活性化され、アルコール発酵が継続するためといわれています。 ところで、ワインや日本酒は乳酸菌が入って品質が損なわれやすいのですが、ワインの劣化を防ぐ方法として、フランスの生化学者パスツールは1860年代に低温殺菌方を考案しました。アルコール分が飛ばない50〜60度の温度で5〜10分煮るというものです。実は、日本人はさかのぼること300年前にこの方法を実施していました。奈良興福寺の塔頭・多聞院では長く酒造りが行われ、文明10年(1478)から約140年間にわたって『多聞院日記』と呼ばれる醸造の記録を残しています。永禄3年(1560)5月20日、「火入れ」をしたという記述があり、パスツールの低温殺菌法とほぼ同じ手順を行っていました。古来、微生物を生活に活かしてきた日本人ならではのエピソードではないでしょうか。

■鰹節
「鰹節」は世界の固い食べもの1位にランキングされるほどの硬度。生のカツオのやわらかな食感から、どうしてあれほど固い食べものができたのでしょうか。これも発酵の働きです。鰹節は3枚におろしたカツオを煮たあと、燻して乾かし、カビをつけ、胞子を落として再度カビづけという作業を繰り返します。カビが繁殖し発酵することでカツオの水分が抜けていき、水分のほとんどない固い物体になるのです。発酵中、カツオの脂肪も分解されるため、鰹節には油脂分もほとんどありません。たんぱく質が分解されるとき、旨み成分のイノシン酸がつくられます。

■納豆
納豆画像 日本の代表的な発酵食品・納豆は「糸引き納豆」と「塩辛納豆」の2種類。「糸引き納豆」は室町時代中期からつくられていたといいます。もともとは煮た大豆を稲わらで包んで保温。わらについている納豆菌によって発酵させました。あのネバネバはアミノ酸の1種グルタミン酸が多数結合(ポリペプチド結合)し、さらに果糖と結合したもの。糸引納豆の約17%はたんぱく質で、成長促進や代謝を高めるビタミンB2は煮大豆の10倍、ビタミンB1、B6、ニコチン酸などのビタミン類、カルシウム、リン、カリウムなどのミネラル類も多く含んでいます。「塩辛納豆」は奈良時代にはすでに食べられていました。煮大豆にコウジカビを繁殖させてできた大豆麹を塩水に漬けて、発酵させたあと乾燥させてつくります。コウジカビの分解酵素が旨み成分のアミノ酸を生成、耐塩性乳酸菌が酸味と風味をつくりだします。

■くさや
伊豆七島の名産として知られる魚の干物「くさや」。名前どおり、匂いが非常に強いことで知られています。アジ、サバ、トビウオなどをクサヤ汁という発酵液につけてから干しますが、この液は塩分濃度4%以下なのに強い防腐力を持っています。塩が貴重だった江戸時代、魚をつけた食塩水を何度も繰り返し使っているうちに発酵し、独特の旨みと匂いが発生してきました。耐塩性の細菌が旨みのもととなるアミノ酸のほかに一種の抗生物質を生成し、保存性が高く味のよい干物ができるようになったのです。クサヤ汁はPH7.80と弱アルカリ性を示し、一般的に酸性が多い発酵食品の中では珍しい存在といえます。

■ふなずし(なれずし)
ふなずし(なれずし)画像
「なれずし」と「魚醤」は東南アジアと日本の食文化の深いつながりを感じさせる食品です。日本で代表的ななれずしといえば琵琶湖のフナを用いる「ふなずし」。鼻にツーンとくるチーズに近い匂いは人によって好き嫌いがありますが、骨まで食べられるほどやわらかく、すっきりとした酸味にはファンが多い珍味です。初夏、フナの鱗とエラを取ったあと、エラ部分から魚の形を壊さないように内臓を取り出し、2〜4カ月間塩漬け。適度に塩抜きし、水分を切った後、樽にごはんと魚を交互に重ね、重石を乗せて発酵させます。ビタミン類を生成するほか、含まれる乳酸菌、酢酸菌には整腸作用があります。

■しょっつる(魚醤)
しょっつる(魚醤)画像 日本の代表的な魚醤は秋田県でつくられる「しょっつる」。ハタハタとごはん、麹、食塩を一緒に樽に漬け込み、重石をして密閉。2年以上発酵させます。長期間熟成させたものが上級品だとか。風味づけに人参や昆布、柚子などを入れることもあります。発酵によって魚の生臭みが消え、旨みが増えます。 大豆を使う醤油も魚醤も原型は中国から伝わった「ひしほ」といわれています。素材を塩漬けし発酵させるという製法ですが、地域によって身近な食材を使い、発展していったと思われます。海に囲まれた日本では魚を使うことが多かったのでしょう。初期は塩辛に似たものだったようです。

■豆腐よう
ねっとりとした舌触りとこくのある味わい、沖縄の「豆腐よう」は豆腐を発酵させた食品です。美しい赤色のもとは紅麹菌。沖縄特産の固い島豆腐をさいの目に切り、塩をふって陰干しし、表面が黄色みを帯びてきたら、泡盛で洗って漬け汁に漬けます。漬け汁は紅麹を泡盛に漬けたものを擂り鉢ですって、食塩・砂糖で好みに味つけしたもの。この中で2〜6カ月間、発酵・熟成させます。たんぱく質と脂質が豊富で、豆腐というよりチーズに近い食感です。