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奇跡の毒抜き・いしかわの発酵文化について

石川県の発酵食品

夏は高温多湿、冬は寒冷という北陸の気候が「発酵」に合うのでしょうか。金沢市大野・金石地区は醤油の産地であり、県内各地に日本酒の蔵元が点在し、石川県ならではの珍しい発酵食品もたくさんあります。石川県は日本の中でも有数の「発酵王国」と言ってもよいかもしれません。

■かぶらずし/大根ずし
かぶらずし/大根ずし画像近年は全国的にも知名度が高くなった「かぶらずし」や「大根ずし」はなれずしから派生した石川県加賀地方の冬の味覚。「かぶらずし」は金沢のお正月には欠かせない一品です。カブを輪切りにし、ひと切れごとに厚みの半分のところに切れ目を入れて塩漬け。やはり塩漬けにしたブリの切り身をカブにはさみ込み、ごはんと麹を混ぜたものと一緒に漬け込んでいきます。「大根ずし」はもう少し庶民的で、大根と身欠きニシンを戻して柔らかくしたものを使います。その年の気温や塩加減で発酵の進み具合が変わるので、漬け込む時間の調整が難しい漬け物です。乳酸発酵による酸味と麹のほのかな甘味、魚の旨みが一体となった味は酒の肴としても人気があります。30〜40年前は12月に入ると、八百屋の店先に「かぶらずし」「大根ずし」用の麹が並びました。当時は家庭で普通につくる保存食でした。

■ひねずし(なれずし)
ひねずし(なれずし)画像魚を塩漬けにしたのち、ごはんと一緒に漬け込み、そのまま乳酸発酵させてつくるなれずし。石川県能登地方でもつくられ、「ひねずし」と呼びます。使う魚はさまざま。ウグイ、アユなどの川魚からアジ、サバ、ハチメ、シャケ、小ダイなどの海水魚もあり、地域で身近な魚類を使ったと思われます。小さな魚は頭と内臓を除き、大きい魚は切り身にします。40〜50日漬け込むと味もしみ、骨も柔らかくなっています。家庭によっては野菜を一緒に漬けることもあるようです。

■こんか漬け(魚の糠漬け)
こんか漬け(魚の糠漬け)画像 海に囲まれた日本でたくさん獲れる魚の保存方法のひとつとして生まれた魚の糠漬け。特に日本海沿岸ではほとんどの地域でつくられており、さまざまな呼び名があります。石川県で多いのは「こんか漬け」。魚の種類によって「こんか鰯」「こんか鰊」と呼ぶ方がより一般的で、「こんか」は小糠(こぬか)から変化したと思われます。イワシ、ニシンのほかにサバやフグなども用い、フグの糠漬けは金沢周辺では「ふぐのすじ」と呼びます。魚の頭と内臓を取り、大きいものは3枚におろし、塩漬けののち糠漬けにします。フグは食塩水につけてから一度干して糠漬けにします。石川県では風味づけに麹を入れることが多いようです。昔は海から離れた白山麓でも「こんか鰯」がつくられ、冬場の貴重なたんぱく源でした。

■いしり/いしる
いしり/いしる画像 能登半島で古くからつくられている「いしり/いしる」は日本の代表的な魚醤のひとつ。七尾湾に面した内浦地区ではイカの内臓、日本海側の外浦地区ではイワシを使うことが多いようです。樽に魚と塩を交互に重ね、そのまま1年から2年発酵・熟成させ、液体部分を汁物や煮物の味つけに利用します。食塩がたくさん使われているのに、塩辛さより旨さを感じるのはアミノ酸が多いから。旨みのもととなるグルタミン酸、酸味のもととなるアスパラギン酸、甘味のブリシン、アラニン、苦味のリジン、アルギニンなどがバランスよく含まれ、奥の深い味が醸しだされます。抗酸化作用や血圧降下作用のあるタウリンも含まれ、保健機能面でも注目されています。ところで「いしり/いしる」にはいくつかの呼び方があります。イカを使うものが「いしり/よしり」、イワシを使うものが「いしる/よしる」ともいわれますが、厳密な区分けはありません。

■このわた(塩辛)
能登の珍味として名高い「このわた」はナマコの腸を使った塩辛です。能登半島は塩辛の宝庫。イカやサザエなど、さまざまな素材が使われているだけでなく、麹を用いたものもあり、味の工夫もされています。

■宝漬け
能登地方でつくられるサバの子(卵巣)を使った麹漬けの一種。初夏、新鮮なサバの卵巣を取り出して、3〜4カ月ほど塩漬けした後、シソの葉で巻いて甘酒、みりん、唐辛子と一緒に漬け込み、4ヶ月間熟成させます。外浦地区ではサバの子を糠漬けにすることもあったようで、魚卵が大事な食材だったことがうかがえます。