料理と器の絶妙のマッチングが 「加賀料理」を生み出す
石川の郷土料理を表現するとき、よく「加賀料理」という言葉が使われる。この言葉には、「加賀百万石の豪華な料理」もしくは「高級料亭の料理」と
いうイメージがつきまとう。しかし、かぶらずしやじぶ煮など、加賀料理と呼ばれるメニューのほとんどは、もともとは庶民的な郷土料理、いわゆるおふ
くろの味なのである。
それでは、「加賀料理」とは何なのか。それはつまり、地元でとれた食材を日常的においしく食べるために工夫されてきた郷土料理を、豪華な器に盛り
付けご馳走として仕立てたものと言えるだろう。
料理自体は、極めて素朴で庶民的なものだったが、その料理が九谷焼や豪華な蒔絵をほどこした漆器などに盛り付けられるといった演出によって、「加
賀料理」へと華麗な変貌を遂げるのだ。
ちなみに「加賀料理」という言葉は、昭和32年(1957)に文藝春秋の取材で訪れた文人・吉田健一(吉田茂元首相の長男)が初めて使った言葉である。
吉田健一は、以後亡くなるまでの約20年間、冬になるとは決まって金沢を訪れるようになったという。
海からの文化と百万石の文化が 石川の郷土料理の個性を作る
石川が古くから育んできた独特の食文化。その由来をひも解くならば、まず第一は、背後に白山連峰、眼前には日本海を臨む屈指の自然条件である。豊
かな自然環境は、四季折々山海の食材をもたらしてくれる。
第二は、海からやってきたさまざまな交易品や文化である。陸上交通が目覚ましく発達した現代において、にわかには想像しにくいが、海運が有力な大
量輸送手段だった近世以前は、海を伝ってさまざまな交流が行われた。北前船のニシンや昆布を筆頭に、海からやってきた交易品や文化は、石川の食に多
大な影響を与えた。
そして、最後は加賀百万石の文化である。日本人にとって料理とは、舌で味わい、そして目で味わうものである。料理は器によってその美味しさを際立
たせ、器もまた料理が盛られることで真価を発揮する。料理と器の絶妙のマッチング。それを可能にしたのは、石川が古くから育んできた食文化と石川な
らではの数々の魅力的な伝統工芸である。
恵まれた食材をふんだんに使って作られた郷土料理は、海からやって来た食文化を取り入れさらに豊かになり、加賀百万石が育んだ文化と一体となって、
絶妙のハーモニーを醸し出した。これこそが、加賀料理の真髄と言えるのではないだろうか。
◆参考文献◆
○加賀料理を極める(北國新聞連載)○加賀・能登(学研)○金沢 味覚と伝統発見の旅(婦人画報社)
○石川県の歴史(河出書房新社)○石川県大百科事典(北國新聞社)○日本全史(講談社)○金沢の旅(日本交通公社)
○珠洲の名陶(珠洲市立珠洲焼資料館)○人づくり風土記(農山漁村文化協会)○日本海こんぶロード北前船(能登印刷出版部)
○金沢・加賀・能登 四季の郷土料理(主婦の友社)○いしかわの自然(北國新聞)○伝統食品・食文化in金沢(幸書房)
○味のふるさと7(角川書店)○加賀の田舎料理(講談社)○加賀・能登 おばあちゃんの味ごよみ(能登印刷出版部)
○かが・のと・かなざわ 四季の料理(北國新聞社)○石川の四季のさかな(北國新聞社)○半島能登の味(北国出版社)
○金沢 味の四季(北国出版社)
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