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| 「自分の好きな仕事を、納得できるまでする。それが職人」と中さんは言う。好きな仕事だからこそ、一つ一つの作業をおろそかにしないのだ。 |
【呂色師】
中堅夫さん
呂色はかつて塗りの一工程であった。塗り上がった上塗の表面を平滑に研ぎ、鏡のように磨き上げていく。この際、毛筋ほどの傷も残さず、最後には職人の柔らかな肌と脂で磨いて仕上げを行う。呂色師・中堅夫さん(54歳)は語る。
「呂色師の仕事は、技も気持ちも繊細でなければ務まりません。輪島塗の最後の工程ですから、私がもし失敗しても、だれも『呂色師が悪い』とは言わない。呂色師の失敗は輪島塗全体の責任になってしまいます。大勢の職人が手間と時間を惜しまず積み重ねてきた輪島塗に対して、私がいい加減な仕事などできるものですか。だから呂色師は繊細にならざるを得ないのです」。
「漆の病院、なんでも屋」と地元業界はもとより、全国各地の骨董品店から信頼の厚い中さんの工房には、たびたび文化財級の漆器の補修依頼が寄せられる。そんな時、中さんは昔日の職人たちと腕比べをしているような気分になるらしい。
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| 上塗を終えた表面を呂色炭で平滑に研ぎ、漆を数回拭き染ませて、細かな研磨材で磨き、鏡のような光沢を生み出していく。 |
「室町時代のものをはじめ、古い漆器を数知れず修理、修復してきました。昔は現代に比べ、いい道具やいい材料に恵まれなかったはずです。それでも、少し手直しすれば今でも立派に使える漆器を作り上げている。彼らは一体どんな知恵と技でこの仕事を成したのか。修理する私自身、彼らに負けたくないから、思わず腕比べしてしまうのですよ」。
孫子の代まで使える輪島塗は、こんな職人の気概から生まれているのかもしれない。
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