【木地師】
 垣地広志さん

 輪輪島塗の木地師は、その工程によって4つの職種に分かれている。ロクロを挽(ひ)いて、椀や鉢など丸いものを作る椀木地師、主にアテを使い、重箱、膳などを作る指物(さしもの)木地師、薄い板を輪に曲げ、丸盆などを作る曲物木地師、膳下部の猫足や銚子の口など複雑な形を作り出す朴(ほお)木地師である。木地師・垣地広志さん(63歳)は椀木地師だ。
 「木地師はまず、道具から作らなければなりません。自分で火をおこし、自分が使いやすいよう鍛冶道具を使ってカンナを作るのです。一つの品物を作る時、用意するカンナは10種類ぐらいでしょうか」。
 垣地さんは、祖父の代から続く木地師の3代目。仕事場ではいま、4代目となる息子の政利さんと一緒に汗を流す。
 「師匠は父です。父にはよく、『飯前仕事、夜なべ仕事をしろ』と言われました。他の人がまだ寝ている朝食前から働き、人が帰った後も、きちんと後片付けをして、翌日の仕事に備えておく、ということです。父は昔人間でしたから口より先に手が飛んできましたが、いまは時代の流れもあり、息子とは話し合いでいろいろ決めています(笑)」。
 木地師の世界では、椀を親、蓋(ふた)を子と呼ぶ。きちんとしたお椀(親)にぴったりと蓋(子)がかぶせられるようになった時、職人は初めて「一人前」と言われるようになる。だからだろうか、垣地さんと政利さんの仕事ぶりは、まさにピタリとはまった一対の椀と蓋のように見えてしまう。
 ケヤキを光にかざすと、繊維の穴が見える。その穴に漆が入り込んで、はげにくくなるのだ。それゆえ、椀木地師はケヤキを使う。  「名前を呼ばれるより、木地屋さんと呼ばれる方がうれしい」と垣地さん。この道に入って47年、骨の髄から木地屋である。


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