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| 国産漆を最も多く使う輪島塗 |
漆とは、漆の木からにじみ出る樹液のことをいう。枝が折れたり、虫や動物に傷つけられた時、手も足も出ない漆木は、漆をにじみ出して傷を直そうとする。漆とは人がけがをした時にできる「カサブタ」に相当するものといえるだろう。
天然漆は環境に敏感である。したがって日本では国産漆が塗りやすく、また仕上がりも美しい。しかし産出量は、年々減少傾向にあり、いまでは輸入漆液で需要の9割以上を補っているのが現状だ。
漆器の品質は、国産漆をどれだけ使うかが一つのバロメーターだが、輪島は国産漆を最も多く使っている漆器産地として、つとに名高い。近年、塗師屋が自家用として漆木を植え始めたのも輪島の「本物」を守る姿勢にほかならない。
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| 10数年かけて育て、採れる量は僅かお椀10個分 |
漆木は人里に近い里山に植林され、丹精して育てられている。10数年の歳月をかけて漆木が十分に成長したら、漆掻(か)き職人は5日ごとに山へ足を運び、鎌で幹に傷をつけ、にじみ出る樹液を集めていく。
こうして、1本の漆木からひと夏かかって採取される漆はわずか200グラム程度。これはお椀をようやく10個作れるほどの量でしかない。いうまでもないが、木は生き物である。木材を育てるにも、樹液を得るにも、気が遠くなるような時間が必要となる。
しかも、漆を採取した木は枯れてしまうから、秋には根元から切り倒し、新芽を再び育てなければならない。輪島塗の職人はだれもが口をそろえてこう言う。
「漆の一滴は血の一滴」
けだし、至言ではないだろうか。
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| 生きている漆 |
漆木の生えていた場所、採取した時期や天候、漆掻き職人の腕前によっても漆の性質は微妙に変わっていくという。塗師は漆の微妙な違いを読み取り、適材適所に漆を使い分けていく。粘りが強く、乾く力も強い漆は下地塗りに、さらさらと粘度が低く、身の濃い漆は上塗りへ、透明度の高い漆は透漆に使われる。
とりわけ重要な上塗漆は、作ってからすぐに使われることは少なく、何年も寝かせて漆の性質が落ち着いてからさらにブレンドを繰り返し、ようやく望ましい上塗漆が完成する。漆は漆木から採取された後も生きている。漆は生き物なのである。
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